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2009第3回九州都市景観フォーラム記録
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□会場からの質疑

日高:
それでは、会場からご質問、ご意見などありましたら、お願いします。

英国の指定基準は具体的にはどういったものか?福岡に応用できそうなものは何?

会場1:

頴原先生に質問させていただきたいと思います。
先ほど、英国の文化財制度について、ご説明いただきまして、国が上から指定する。その前に戦後、国が全国的に調査をして指定されたということでしたが、その指定された中には近・現代のものがあるとお聴きしましたが、実際に近・現代のものを指定する際に、どのような作業をされるのか、具体的なご説明いただければと思います。また、それに加えて、もし英国の指定のやり方が福岡にも適用できるのであれば、そのために条例等が考えられるのか、教えていただければと思います。

頴原:
英国で指定する際の基準がどのようなものか、というご質問ですが、基準という基準はないような気がします。本当に、ちょっと良いと思われるものは何でも、どんどん登録されていくと思います。ちょっとした賞を受賞したものなら登録されると思います。むしろ、GradeのTにするか、U*あるいはUにするかといったことは、あると思います。日本の文化財と同じようにガッチリ守りたい凍結保存のようなものはGradeT、そしてそれ程でもないものはU*、これからも変わる可能性がある或いはとりあえずといったものはUであるといった感じです。それから、今回のお話した中で、福岡に応用できるものということですが、福岡には近・現代建築がすごくたくさんあると思います。磯崎新にせよ、黒川紀章にせよ、吉村順三にせよ、前川國男にせよ、そういったモダニズム建築の宝庫にして、それを売り出すだけの福岡には量と質があると私は思います。モダニズム建築の宝庫である都市として、積極的に売り出していくことを考えてみてはどうでしょうか。

今、取り組み始めた中洲・那珂川沿いの住民中心のまちづくりに多くのご支援を。

会場2:
中洲に60年ほど住んでいます。その中で、地元のことについて、いろんな問題を見聞きしてきました。特に、地域の環境、公園とか道路などについて、地元が望んでいることがなかなか反映されない。行政に任せっきりという面もありますが、これからは住民が進んで物事を考えないといけないと最近、常々、思います。
丁度、昨年、那珂川の護岸が清流公園辺りで崩落したのをきっかけに、中洲の住民でも地元の街づくりについて議論を始めました。そこでの住民側の意見に、今後は公園の中に屋台は置かないで欲しいといった声が多く出されました。今日の先生方の話にあった、別の空き地に屋台村のようにして屋台を移すことができるなら、その方がよいと思います。中洲に住んで同じように飲食業をしているのに、何で屋台はタダで住民が営業する店には税金が徴収されるのか。同じ中洲で商売をやっていて、矛盾や不公平を感じる地元住民は非常に多いのです。
今、崩落した清流公園については、地元で盛り上がっていて、毎月、会議を開いています。もう既に3回開きました。昨年11月から始まり、今月2月26日には、地元総出の清掃活動をやった後に、清流公園の再生について住民の意見を聴く会を開く予定です。住民サイドで住民目線のまちづくりに取り組んでおります。
今日のフォーラムでは、那珂川を中心に福岡都心のこれからについて、先生方にいろんなお話をうかがったのですが、博多駅周辺の再開発など話題になっている昨今、今後の中洲や冷泉界隈がどうなるか、地元を代表して私がお話を聴かせていただいた次第です。何かご支援がたまわればよろしくお願い致します。

日高:
今の話は、基本的には、那珂川沿いの中洲での住民の街づくりの取り組みについてご紹介いただき、登壇のパネラーや会場にいる専門家の方々に支援を要請されたご意見だったかと思います。まちづくりでは、実際につくられるものが、必ずしも地元のニーズに合ったものではないということが指摘されましたが、これについて何かコメントがあるでしょうか。

佐藤:
貴重なご意見ありがとうございました。私のパワーポイントの時に少し触れたんですけれど、今年が初年度ですが、那珂川周辺で行政の方、NPOの方、市民の方、企業の方を含めて、那珂川のまちづくりビジョンを作成する『那珂川河畔空間再生会議』を立ち上げました。先日も開催して中洲の自治会の方にも来ていただいたのですけれど、地元の目線からいろいろなアイデアをいただきました。今後も地元の方々と一緒にやっていきたいと思っていますので、是非ともよろしくお願いします。

日高:
やはり佐藤さんのように、中間的な立場の人がまちづくりには重要なんだろうなということを最近、思っています。そういう中立的な人、あるいは団体をうまく活用して、地元目線のまちづくりを進めていただきたいと思います。


□各パネラーから那珂川の都市デザインに一言提言

日高:
パネルディスカッションや今日のフォーラム全体の話を踏まえ、各パネラーの方々から今後の『那珂川の都市デザイン』について、ご提言をいただきたいと思います。パネラーの方々には、それぞれお手元のボードに提言を書いて、その後、書かれた提言の説明をお願いします。では、金澤先生からお願いします。

金澤:
今日の議論の中から、『水辺に橋詰広場のプロジェクトの展開を!』というのを提案したいと思います。
当然、先ほど説明した通り、川というのは「結界」、「境界」となっていますので、橋のところに人間の活動が集中するわけですね。特に橋詰というのは、昔から人が集まる情報交換の場になっています。昔から大体、高札や番所が置かれた場所で、そこに人や情報が集まるのは日本の都市の特色ですから、その人と情報が集まる主要な結節点である橋詰広場の周辺を先導的にプロジェクトを展開してはどうだろうかと提案させていただきます。博多にもいろんな水辺空間がありますので、どこら辺で具体的にプロジェクトを進めていくかはよく吟味する必要がありますが。
例えば、中洲の橋詰の場合、その周辺には中洲の夜の顔に加え、昼の顔を新たに注入してやるプロジェクトを企画してはいかがでしょうか。そこでは、地区全体をどうするという前に、橋詰の場所を最初の突破口として、先導的にプロジェクトを展開していく。そうした成功を重ねながら、全体へと波及させていく。都市デザイン的な手法も込めて、ご提案させていただきました。




佐保:
私は『テーマパーク的なコンセプトで!』、中洲周辺の街づくりを見直してはどうかと思いました。これは、機能的にも空間的にも景観的にもです。ネオン看板を保存するとか、無くすとかの議論がありましたが、もう少し『テーマパーク的なコンセプト』を取り入れながら中洲を再構成する中で、今後のネオン看板のあり方が見えてくると思います。少し具体的になりますが、中洲の那珂川に面したところに、エクセル東急のホテルがありますよね。僕はあれは中洲にはそぐわないのでは、もっと別のデザインがあるのでは、ちょっと異質かなと思っています。そういった点でもやっぱり中洲全体のコンセプトを議論する必要があるのではないかと思います。




頴原:
先ほど、ワンルームマンションが建っていることが、どちらかというと否定的な雰囲気で言われたのですが、私は住めるものなら中洲に住みたいと思っている人間です。それって駄目なんでしょうかと質問したかったのですが。
私は東京出身で、歌舞伎町の北の新大久保のちょっと上辺りに住んでいましたので、全然、繁華街というものに違和感を感じないわけです。東京から来た方で「最初は中洲に住みたい」と言っていたのを知っています。ですから、中洲に住むのにうるさ過ぎるという感覚が全然ないのです。
やはり、そこに住む人がいると言うことによって、地域というのは本当の息づいたものになると思います。先ほどの佐藤さんのスライドの中に「昔は那珂川でよく遊んだよな」という、子どもの風景を写し撮った写真がありました。そうした風景が今は無くなっていることに、残念で惜しいと思います。やはり『子どもなり家族なりが居る風景というのが、中洲なり那珂川に出てくることはないのでしょうか?』ということを、質問という形となりますが、私の提言とさせてください。その心として、「中洲に子どもや家族が居る風景を再生する」といったことを考えてみたらどうでしょうかという提言です。




日高:
面白い視点での提言であったと思います。現在、建っているマンションは投機的なものと聞いていて、本当にそこに住むということでマンションが建っているのか。あるいはそうでなくただドーンッと建っているだけなのか。ちゃんとしたプランとビジョンの上で、マンションや人が暮らす空間が造られなければ、そうした風景は生み出されないと示唆されたのだと思います。

藤:
私の提言は『川沿いに舞台をつくる!』と書きました。私は、ベネチアだとかオランダといった、海や水辺が生活のすぐ傍にある場所が凄く好きで、私が昼間に中洲近辺の那珂川沿いにいくなら、お茶が飲める所があれば良いなと思います。そうする時に、日常の普段の生活の中で天神からちょっと足を伸ばすと、そこには那珂川があって、対岸には中洲がある。そこではいつも川沿いでいろんなアクティビティがあって、まるで舞台のようにして、いろんな人がいろんな日常を演じている。そんな光景を私は川沿いのカフェでお茶を飲みながら日永一日、眺められたら最高だと思います。私としては、これだけ都心近くに川があるということ−大阪よりも福岡の都心は近いんじゃないか−を活かして、本当に水辺を活かし気軽に触れる装置・舞台をつくってやれば、他の都市には負けないブランド力のひとつになると思います。今まで言われているコンパクトな都心機能に、プラスして他の都市には負けないシンボル空間を那珂川・博多川で実現できるのではと思っています。




日高:
以上、パネラーの方々からいろんな提案をいただきましたが、このフォーラムなど、公開の場でいろんな議論を交え、将来に向けた地道な提案を続けることが、地域が担っていく真のまちづくりの糧になると感じました。また、これから佐藤さんが参画される『那珂川河畔再生会議』などに、この議論を引き継いでいただければと思います。
時間もかなり超過していますので、この辺で締めたいと思います。
このフォーラムの記録は、JUDI九州のホームページに掲載する予定ですので、ご参加の方々もその記録を参考に各地域でのまちづくりに役立てていただければと思います。



以上で『福岡の都市のかたちと歴史の継承』のパネルディスカッションを終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。





■閉会
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